目玉屋ぬいの研究室

kawaiiものとdarkなものを研究するブログです。ユックリしていってね(今まで雑記ブログでしたが、ようやく方向性が定まりました)

レトロでkawaiiイラストレーター紹介!その1[乙女のカリスマ中原淳一]

ごきげんよう

 

何をブログで書こうか悩んでいると、そういや自分はかわいいものが大好きだ!ということに気付き、レトロでかわいいイラストとかを紹介すれば面白いかな〜と思い、今書いています。

 

かわいいもの。それはいまや世界中でkawaiiという言葉で通用するくらい、国境のないものです。もちろん、性別や年齢も一切関係ないと思っています。

 

そこで今回は、昭和時代、かわいくて美しい女性を描き続けた中原淳一というイラストレーターについて、ご紹介しましょう!

  

中原淳一 ART BOX  装いコレクション (ARTBOX)

 

中原淳一は、1913年に香川県に生まれ、小さい頃から芸術の才能があったそうです。

18歳の時、趣味で作ったフランス人形が認められ、東京の百貨店で個展を開きました。

それがきっかけとなり、雑誌の「少女の友」の挿絵、口絵、表紙絵、付録等を手掛けるようになり、当時の若い女性などに絶大な人気を得ました(ファンには、後の弟子である内藤ルネという男性もいました)。

 

『少女の友』創刊100周年記念号 明治・大正・昭和ベストセレクション

 

大きな影響を受けた画家は、竹久夢二。あの細い線の体や、憂いを秘めた目など、確かに受け継いでいるものは多いように思います。若い頃は、神田神保町で夢二の本を買い集めたそうです。

 

竹久夢二 (別冊太陽 日本のこころ 20)

 

戦前から、「少女の友」の雑誌でその才能を発揮していましたが、戦争中は、軍の干渉により、「少女の友」を降板させられてしまいました。中原淳一の描くような華やかな絵は、戦争中には描かせてくれなかったのです。この時に、元宝塚トップスターの葦原邦子と結婚します。

 

そして、1945年には招集され入隊。復員後は、今となっては伝説の雑誌「それいゆ」(1946年)を創刊します。以後、「それいゆ」より年齢層の下の「ひまわり」(1947年)、それいゆの妹雑誌「ジュニアそれいゆ」(1954年)、「女の部屋」(1970年。4号目までしか作られませんでした)を刊行していきます。

 

別冊太陽238 中原淳一のそれいゆ (別冊太陽 日本のこころ 238)

 

 

雑誌を刊行した理由は、太平洋戦争後の女性の姿にありました。中原淳一は、女性が生活のためにお洒落や身なりの工夫を捨て、もんぺ姿で必死に生活を繋ぐ様子を見て、

 

女性がこのままではだめだ!!!」と感じます。

 

彼には、やはり女性には美しくあって欲しかった。だから、日本の女性がもっと賢く美しい女性になれるよう、女性に夢と希望を与え、女性が外見も内面も輝けるための雑誌を作ったのです。

 

 

中原淳一は、編集長として女性誌の基礎を作っただけでなく、画家、ファッションデザイナースタイリストインテリアデザイナー、人形作家など多彩な才能を発揮します。その全ての分野において、現代につながる先駆的な存在となりました。彼がいなかったら、日本のアートやファッションや雑誌の業界はどうなっていたんでしょうね。

 

しかし1958年半ばより、中原自身が病に蝕まれるようになりました。1983年に70歳にて逝去するまで、療養と闘病を繰り返しながらの芸術家活動だったそうです。

 

ちなみに、長男は画家の中原州一、次男は株式会社ひまわりや代表取締役中原蒼二、次女は布小物作家の中原すみれ。長女は中原芙蓉という方で、何をされているかはわかりませんが、中原淳一に関するインタビューや講演会などで、その父について度々話されています。

また、姪はシャンソン歌手の中原美紗緒孫は俳優・声優の加古臨王です。すごい芸術一族ですね。

 

 

中原淳一の絵の特徴である大きな瞳は、後の少女漫画に通じるものがあると思います。内藤ルネはもちろん高橋真琴宇野亜喜良林静一(小梅ちゃんの絵の人)、田村セツコ花村えい子美輪明宏、ピーコ、コシノヒロコ浅丘ルリ子假屋崎省吾瀬戸内寂聴など、多くの芸術家や芸能人も彼から影響を受けています。

 

また、少女絵があまりにも素敵すぎて、人形作家の部分はあまり認知されていないようにも感じますが、人形もとても素晴らしいものばかり。

 

中原淳一の作った人形を、自分で作られる本もありますよ。

 

中原淳一の人形―人形への熱き想いと作り方のすべて (別冊太陽)

中原淳一の人形―人形への熱き想いと作り方のすべて (別冊太陽)

 

私は図書館でよくこの本を借ります。ボリュームがすごく、作り方も細かい文字でぎっしり描いてあります。実際に作らなくても、画集のようにも読めて、とても面白いですよ。人形好きにはたまりません。

 

表紙には、男性の人形が映されていますが、これは「3人のスリ」というタイトルが付いています。ロマンチックな人形を作ると思いきや、意外と渋くかっこいい人形も作っているんですよねー。

他にも、酒に呑んだくれて、テーブルに伏している男性の人形もありました。もちろん、女性の人形もたくさん作っていて、どれも味があって美しいものばかりです。ぜひ、こちらの才能にも目を向けてほしいですね。

 

中原淳一で特筆すべきことの一つとして、「エッセイ」があります。雑誌では、女性の振る舞い方や気をつけておくべきこと、心構えなど、ファッションなどの見た目だけでなく内面も良くなってほしいと、色々なアドバイスやエッセイを書いています。

 

どれも、上から目線ではなく、わかりやすく丁寧な言葉で書かれ、ストンと心に響くようなものばかり。ちょっと辛口な時もありますが、女性として気高く美しくいてほしいという愛ゆえの言葉だとしみじみ感じます。

 

「あなたが一番美しく見える時は、

あなたが一番立派な服を着た時でなくて、

あなたが一番美しい心を

もった時ではないでしょうか。」

 

「幸せになりたかったら、

自分の身のまわりのしあわせを

自分で感じるようなひとになることが

一番大切だという事を

知って下さい。」

 

などの「美しい心」についての言葉や、

 

「まず清潔であることです。

美しさの最も尊いものは清潔です」

 

「家にいる時は、

外出する時とはまた別の、

いかにも家にいるらしい美しさ、

というものがあるのだということを

知ってほしい」

 

などの「みだしなみ」についての言葉、

 

「きちんと掃除が出来たあとの清々しさ。

それだけでも明るい気持ちになれるものだ。」

 

「かわいらしいカーテンで彩られたあなたの部屋は、

あなたの若い日のよろこびをぐんと大きくしてくれて、

そんな暮らしの中から、あなたの豊かな美しい表情が

生まれてくるのです。」

 

などの「豊かな暮らし」についての言葉、

 

「年をとるということは、

人間として完成してゆく素晴らしいことだと

知らなければなりません。」

 

「美しい心の人は

一日では生まれない」

などの「美しく生きる」ための言葉など、

本当に多くの名言を残しています。

 

やはり、中原淳一の言葉はとても深い!と改めて思います。

特別なことを書いているわけではないのですが、襟が正されるというか、ハッと気づかせてくれる言葉ばかり。

 

ただ可愛い絵を描いていたわけではなく、中原淳一の描く少女や女性を見た人にも、彼女らのような美しい存在であってほしいと願っていたのでしょうね。

 

美しいとは、顔や体型の美しさではなく、立派な服を着ることでもなく、お金がなくてもできるような身だしなみをまめにして、同時に美しく優しい心を磨き続ける姿勢、なのですね。

 

真の意味で美しい女性になれるよう、私も生きていきたい!

 

中原淳一の絵や言葉は、見た人にそんな希望を持たせてくれるのです。

 

〈ルポ〉かわいい!  竹久夢二からキティちゃんまで

 

ここまで読んでくれてありがとうなぎ。

では、ごめんあそばせ。